今年も暑い夏がやってきました。
私が勤務するクリニックでも、熱中症を疑い受診される方が増えています。
中には、コロナ感染症と熱中症の症状が重なり、見極めが難しいケースもあります。
今回は、実際の受診事例をもとに「熱中症と感染症の違い」「見逃してはいけない症状」「正しい初期対応」についてご紹介します。
◆事例①
40代男性/警備員
炎天下で警備業務中、大量の発汗があり、こまめに水分補給をしていたものの、勤務中に足がつる(こむら返り)・強い倦怠感・頭痛を訴え受診されました。
来院時は会話可能で、発汗の跡が服に残っていましたが、皮膚はすでに乾燥傾向。
倦怠感も強かったため、点滴治療を実施。症状は改善したものの、疲労感が残っていたため、「自宅では経口補水液をしっかり摂り、安静に過ごすよう」指導しました。
◆事例②
20代男性/スポーツ中に発症
運動を始めてすぐに体調が急変し、発熱(38度)とともに「熱中症かもしれない」と来院。
来院時は咽頭痛や鼻水もあり、感染症を疑って検査した結果、新型コロナウイルス感染症と診断されました。
◆【解説】なぜ感染症を疑ったのか?
「熱中症=発熱」と思われがちですが、熱中症で38度以上の発熱がある場合は“重症”に分類され、入院が必要となるケースがほとんどです。
熱中症は体温調節機能が破綻し、体内に熱がこもり続けることで高体温に至ります。一方、感染症の場合はウイルスや細菌に対抗するために体温が上昇する生理現象です。
このため、夏場は熱中症とコロナなどの感染症が混同されやすく、見極めが重要となります。
感染症を疑うサインとしては「咽頭痛」「鼻水」「咳」などの呼吸器症状がポイントになります。
◆【熱中症の主な初期症状と重症度分類】
初期症状
頭痛/倦怠感・疲労感/こむら返り(足のつり)/手足のしびれ など
→ 涼しい場所で休息、経口補水液などで水分・塩分補給を!中等症(重症度Ⅱ度)
激しい頭痛/嘔吐/意識がもうろうとする/反応が鈍い
→ この段階では医療機関の早期受診を推奨します。重症(重症度Ⅲ度)
高体温(40度近く)/意識障害/歩行困難
→ 迷わず救急車を要請してください。命に関わるリスクがあります。
◆【現場で多い“落とし穴”】
クリニックで重症度Ⅱ度の熱中症の方を診察する際、
「水のみで水分摂取」しているケースが多くみられます。
経口補水液など塩分を含む飲料での補給が重要ですので、
長時間の外作業や運動時は「水+塩分」の補給を心がけてください。
◆【最後に——読者へのメッセージ】
これから本格的な夏を迎えます。
熱中症だけでなく、感染症にも十分注意が必要です。
どちらも**「早期発見・早期対応」**が重症化を防ぐカギです。
こまめな経口補水液での水分補給、そして異変を感じたら早めに医療機関へご相談を。
このブログが皆さまの健康管理の一助となれば幸いです
参考リンク一覧
環境省 熱中症予防情報サイト
暑さ指数(WBGT)や熱中症警戒アラートなど、最新の情報を提供しています。
https://www.wbgt.env.go.jp/
厚生労働省 熱中症予防のための情報・資料サイト
熱中症の基礎知識や予防法、職場での対策などを網羅しています。
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/nettyuu_taisaku/
日本救急医学会 熱中症診療ガイドライン 2024(PDF)
医療従事者向けの診療ガイドラインですが、重症度分類や対応策の理解に役立ちます。
日本気象協会「熱中症ゼロへ」プロジェクト
熱中症の予防法や対策、専門家のアドバイスなどを提供しています。
気象庁「熱中症から身を守るために」
気象情報と連動した熱中症予防のための情報を掲載しています。
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