※本記事は2026年9月21日時点の日本小児感染症学会「小児消化管感染症診療ガイドライン2024」、NICE、厚生労働省などの公開情報をもとに作成した一般向けの医療情報です。
個別の診断や治療を行うものではありません。ぐったりして反応が悪い、呼吸がおかしい、けいれん、緑色の嘔吐、強い腹痛、血便などがある場合は、胃腸炎と決めつけず速やかに医療機関へ相談してください。
こんにちは。看護師のニシユウです。
今回は、私が臨床現場で実際に経験してきた「子どもの嘔吐・胃腸炎」について、保護者の方にぜひ知っておいていただきたいポイントをまとめます。
子どもの嘔吐は、ウイルス性胃腸炎などでよくみられる症状です。 多くは自然に改善しますが、乳幼児では短時間で脱水が進むことがあり、食事や水分を十分に取れない状態が続けば低血糖を起こすこともあります。
大切なのは「何回吐いたか」だけではなく、 水分が取れているか、おしっこが出ているか、顔色や反応はどうか、普段と比べて元気があるか を見ることです。
この記事の結論
- 子どもの嘔吐でまず注意したいのは脱水
- 脱水が疑われる場合の水分補給は経口補水液(ORS)を少量ずつ頻回に
- 吐いたからといって長時間絶食させず、補水できたら年齢に応じた食事を早めに再開する
- 緑色の嘔吐、血便、激しい腹痛、反応低下などは「胃腸炎以外」の病気も考える
- 判断に迷う場合は#8000などを利用し、状態が悪い場合は119番を考える
子どもの嘔吐・胃腸炎でまず注意したいのは「脱水」
嘔吐や下痢が続くと、体から水分と電解質が失われます。 特に乳幼児は体が小さく、自分で十分な水分を取ることも難しいため、大人より短時間で脱水が進むことがあります。
日本小児感染症学会などが監修する「小児消化管感染症診療ガイドライン2024」でも、 軽度〜中等度の脱水に対する第一選択は、適切な経口補水液(ORS)を用いた経口補水療法 とされています。
脱水を疑うサイン
- おしっこの回数や量が普段より明らかに少ない
- 口の中や唇が乾いている
- 泣いているのに涙が少ない
- 目がくぼんで見える
- 顔色が悪い
- 手足が冷たい
- いつもよりぐったりしている
- 反応が鈍い、起こしにくい
- 水分を飲ませても何度も吐いてしまう
「半日おしっこが出ていない」といった固定時間だけで判断するのではなく、 普段と比べて尿量が明らかに減っているかを見ることが大切です。
尿が明らかに少ない、ぐったりしている、水分をほとんど取れない、飲ませても繰り返し吐く、といった状態では家庭での補水だけにこだわらず医療機関へ相談してください。
嘔吐後の水分補給は「少量ずつ、繰り返す」が基本
吐いた直後は、心配になって一気に水分を飲ませたくなるかもしれません。 しかし、一度に多く飲むと胃が刺激され、再び吐いてしまうことがあります。
脱水が疑われる場合は、水やお茶だけではなく、 水分・ナトリウム・糖質が適切に調整された経口補水液(ORS) が基本になります。
家庭で経口補水を試すときの考え方
- 嘔吐直後は少し落ち着くのを待つ
- まずはスプーン1杯程度の少量から始める
- 1〜2分おきなど、少量をこまめに与える
- 吐かなければ少しずつ量を増やす
- 一気飲みは避ける
海外の小児胃腸炎ガイドラインでも、嘔吐がある子どもでは経口補水液を少量ずつ頻回に与える方法が推奨されています。
ただし、何度試しても水分を保てない、ぐったりしている、反応が悪い、脱水が進んでいる場合は、経口補水が難しい状態の可能性があります。 その場合は医療機関での評価が必要です。
母乳は基本的に継続できます。少量ずつでも飲める場合は、赤ちゃんの様子を見ながら続けてください。明らかに飲めない、繰り返し吐く、反応が悪い場合は受診してください。
吐いたら「絶食」させた方がいい?
「吐いたから今日は何も食べさせない方がいい」と考えることがありますが、 長時間の絶食は基本的には必要ありません。
脱水がある場合はまず経口補水を優先します。 水分が取れるようになり、嘔吐が落ち着いてきたら、年齢に応じた普段の食事を少量から再開します。
日本の小児消化管感染症ガイドラインでも、 脱水が是正された後は、通常濃度のミルクや年齢に応じた通常の食事をできるだけ早く再開する ことが推奨されています。
おかゆやうどんだけに長期間限定する必要はなく、食べられる範囲で普段の食事へ戻していきます。 ただし、脂っこいものや大量の食事を無理に食べさせる必要はありません。
低血糖にも注意。ただし「脱水と同じ」とは限らない
子どもの嘔吐でまず注意したいのは脱水ですが、 乳幼児では食事や糖質を十分に取れない状態が続くと、低血糖を起こすことがあります。
特に、嘔吐が続いて何も食べられない、夜から翌日までほとんど摂取できていない、といった状況では注意が必要です。
低血糖を含む重い状態を疑うサイン
- いつもより明らかに元気がない
- ぐったりしている
- 顔色が悪い
- 反応が鈍い、ぼんやりしている
- 起こしにくい
- 震えがある
- けいれんがある
ただし、これらは低血糖だけに特有の症状ではありません。 脱水、感染症、電解質異常、そのほかの病気でも起こる可能性があります。 家庭で「低血糖だ」と決めつけるのではなく、状態が悪い場合は医療機関で評価を受けてください。
ぐったりして反応が弱い、意識がおかしい、けいれんしている場合は、夜間であっても緊急対応を考える状態です。
「胃腸炎」と決めつけてはいけない危険サイン
子どもが吐いているからといって、原因が必ず胃腸炎とは限りません。 NICEの小児胃腸炎ガイドラインでは、次のような症状を胃腸炎以外の診断を考える重要なサインとして挙げています。
- 緑色(胆汁性)の嘔吐
- 血便、または血液・粘液を伴う便
- 強い、または場所がはっきりした腹痛
- お腹が大きく張っている
- 意識や反応がおかしい
- 首が硬い、強い頭痛などがある
- 呼吸が苦しそう
緑色の嘔吐は特に注意
黄色っぽい胃液ではなく、はっきり緑色の嘔吐は胆汁性嘔吐の可能性があります。 腸閉塞など、胃腸炎とは異なる緊急性の高い病気が隠れていることがあるため、速やかに医療機関で評価を受けてください。
「何度も吐いているから胃腸炎だろう」と決めつけず、吐いたものの色や腹痛、腹部の張り、子どもの反応にも注意してください。
生後3か月未満の赤ちゃんは特に慎重に
赤ちゃんには生理的な吐き戻しもあるため、 生後3か月未満で1回吐き戻しただけで必ず救急受診が必要という意味ではありません。
一方で、次のような場合は早めの評価が必要です。
- 繰り返し嘔吐する
- 母乳やミルクをほとんど飲めない
- ぐったりしている、反応が弱い
- 噴水のように勢いよく何度も吐く
- 緑色の嘔吐がある
- 発熱を伴う
- 尿量が普段より明らかに少ない
特に生後3か月未満で38.0℃以上の発熱がある場合は、元気そうに見えても医療機関へ速やかに連絡してください。
朝まで様子を見られる場合と、夜間でも相談したい場合
夜間に子どもが吐くと、「朝まで待ってよいのか」と迷うと思います。
元気があり、少量ずつ水分を取れていて、尿も普段どおり出ており、顔色・反応に問題がない場合は、家庭で経過を見ながら翌日の診療時間に相談できることもあります。
一方、次のような場合は朝まで待たずに医療機関や#8000などへ相談してください。
- 繰り返し吐き、水分を保てない
- 尿量が普段より明らかに減っている
- ぐったりしている
- 顔色が悪い
- 反応が鈍い
- 血液を吐いた
- 緑色の嘔吐がある
- 血便がある
- 激しい腹痛や腹部の強い張りがある
- 強い頭痛や首の硬さがある
- 乳児で繰り返し吐き、哺乳できない
夜間・休日の子どもの症状で受診すべきか迷う場合は、 #8000(子ども医療電話相談) を利用できます。実施時間や一般ダイヤル番号は都道府県によって異なります。
119番を考える状態
次のような場合は、電話相談を待たず119番を考える緊急性の高い状態です。
- 意識がおかしい、呼びかけへの反応が明らかに弱い
- 起こしても反応しにくい
- けいれんしている
- 呼吸が明らかに苦しそう、唇が青紫色
- ぐったりして水分を飲めないほど状態が悪い
- 急速に状態が悪化している
家庭で避けたい対応
- 吐いた直後に大量の水分を一気に飲ませる
- 脱水が疑われるのに水やお茶だけで対応し続ける
- 果汁や炭酸飲料を補水目的で大量に与える
- 長時間まったく飲食させない
- 下痢止めを自己判断で使用する
- 大人用の吐き気止めや市販薬を自己判断で使用する
- ぐったりしているのを「寝ているだけ」と考えて長時間様子を見る
- 緑色の嘔吐や激しい腹痛を「胃腸炎だから」と様子を見る
薬の使用は年齢、体重、原因疾患によって判断が変わります。 自己判断で薬を使う前に、医師・薬剤師へ相談してください。
感染対策|ノロウイルスでは手洗いと適切な処理が重要
ウイルス性胃腸炎、とくにノロウイルスでは、嘔吐物や便を介して家族内感染が広がることがあります。
厚生労働省は、ノロウイルス対策として石けんと流水による手洗いを重要としています。 アルコールによる手指消毒は手洗いの代用にはならず、補助的な位置づけです。
嘔吐物を処理するときのポイント
- 使い捨て手袋、マスクなどを使用する
- 嘔吐物や便は乾燥する前に処理する
- 飛び散らないよう静かに拭き取る
- 使用したペーパー類はビニール袋へ入れて密閉する
- 汚染した床などは、次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤を製品表示に従って使用する
- 処理後は十分に換気する
- 最後に石けんと流水で手を洗う
- タオルの共用を避ける
厚生労働省は、吐物などを拭き取った後の床について、次亜塩素酸ナトリウム約200ppmでの処理を案内しています。 家庭用塩素系漂白剤を使用する場合は、必ず製品表示や使用上の注意に従ってください。
塩素系漂白剤は、酸性タイプの洗剤と混ぜないでください。有毒な塩素ガスが発生する危険があります。換気し、子どもの手が届かないように使用・保管してください。
まとめ|吐いた回数より「全身状態」を見る
子どもの嘔吐や胃腸炎では、吐いた回数だけでなく、 水分、尿、顔色、反応、腹痛、吐物の色などを合わせて見る ことが大切です。
- まず注意したいのは脱水
- 脱水が疑われる場合は経口補水液を少量ずつ頻回に与える
- 補水できたら、長時間絶食せず年齢に応じた食事を早めに再開する
- 乳幼児では摂取できない状態が続くと低血糖にも注意する
- 緑色の嘔吐、血便、激しい腹痛などは胃腸炎以外の病気も考える
- ぐったり、反応低下、けいれん、呼吸異常は119番を考える
- 夜間・休日に迷う場合は#8000を活用する
胃腸炎の多くは自然に改善しますが、 「いつもと違う」「水分が取れない」「尿が減った」「反応がおかしい」 と感じた場合は、家庭だけで抱え込まず医療機関へ相談してください。
本記事は保護者向けの一般的な健康情報です。実際の受診判断は、お子さんの年齢、基礎疾患、症状の経過、地域の医療体制などによって変わります。状態に不安がある場合は、かかりつけ医、地域の小児救急電話相談、救急外来、119番などへ相談してください。