2025年7月8日火曜日

聞きなれない病気「尿毒症」

 皆様、こんにちは。看護師のニシユウです。 このブログでは、私の趣味や医療について書いていきます。医療については、季節に関連する疾患から、私がこれまであまり経験したことがない疾患の症状や予後についてもお伝えしていきます。もちろん、患者さんの個人情報には十分配慮して記載します。

印象的だった尿毒症の症例

今回は、私がクリニックで出会った、あまり経験したことのない疾患についてご紹介します。

ある患者さんは、2~3週間続く嘔吐を主訴に来院されました。かかりつけ医には既に2回受診し、ピロリ菌感染が見つかったため除菌治療が行われていましたが、制吐剤の処方はなく症状が改善しないため当院を受診されたとのことでした。

来院時から持続的な嘔気を訴えており、非常に苦しそうな様子でした。担当医師は当初、心因性の可能性も考慮していましたが、念のため血液検査を実施したところ、腎機能に明らかな異常が認められました。BUN(尿素窒素)72mg/dL、CRE(クレアチニン)7.25mg/dL(一般的な正常値はBUN: 8-20mg/dL、CRE: 男性0.6-1.1mg/dL、女性0.4-0.8mg/dL程度)と著しい高値を示し、重度の腎障害が疑われました。そのため早急な精密検査が必要と判断し、総合病院へ紹介となりました。


診断結果:尿毒症と薬剤性間質性腎炎の疑い

後日、紹介先からの返書を確認したところ、診断名は「尿毒症」および「薬剤性間質性腎炎疑い」となっていました。詳細な検査結果はまだ届いていませんが、腎炎によって腎機能が急速に低下し、尿毒症を発症したものと考えられます。


考えられる原因

この患者さんは糖尿病の既往があり、その治療薬に加えてシクロスポリンカプセルも服用されていました。シクロスポリンは免疫抑制剤で、主に臓器移植後の拒絶反応予防や自己免疫疾患の治療に使用されますが、重症アトピー性皮膚炎にも適応があります。この患者さんもアトピー性皮膚炎があり、そのために処方されていたようです。

医学文献によれば、シクロスポリンは薬剤性間質性腎炎を引き起こす可能性のある薬剤の一つとして知られています。しかし、担当医師も「これが原因かもしれないが、詳細な検査なしでは断定できない」と述べており、現時点では可能性の一つとして考慮されている段階です。


特徴的な症状:皮膚の色素沈着

尿毒症の特徴的な症状として、皮膚の色素沈着があります。腎機能低下により尿素などの老廃物が体内に蓄積されることで、皮膚が黒ずむことがあります。この患者さんの場合、単なる日焼けとは明らかに異なる特徴的な黒色化が見られました。興味深いことに、ご家族はこの皮膚の変化に気づいていなかったとのことで、おそらく徐々に進行したためと思われます。


尿毒症について正しく理解する

尿毒症とは、腎臓の働きが極度に低下して起こる全身の変化を指します。急性あるいは慢性の腎臓障害が進行し、腎機能が正常の10分の1程度まで著しく低下した末期腎不全の状態です。適切な治療を行わなければ生命に関わる深刻な状態となります。

一般的に尿毒症は慢性腎不全の末期に見られることが多いですが、今回のケースのように急性の腎炎でも発症することがあります。この点は私自身も再認識させられました。


医療者としての学び

尿毒症を引き起こす原因として慢性腎不全を主に想定していましたが、急性の間質性腎炎でも発症しうることを実例を通して学びました。また、薬剤性間質性腎炎を引き起こす可能性のある薬剤としてシクロスポリンが含まれていることも、今後の臨床で注意すべき知識として心に留めておきたいと思います。

私たち医療者は、患者さんの症状を多角的に観察し、背景にある病態を見逃さないよう常に注意を払う必要があると改めて感じた症例でした。

※医薬品の副作用については個人差があり、同じ薬でも全ての方に同様の反応が起こるわけではありません。気になる症状がある場合は、自己判断せず必ず医療機関にご相談ください。

[^1] Naesens M, et al. "Calcineurin inhibitor nephrotoxicity." Clin J Am Soc Nephrol. 2009.
[^2] 日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン」
[^3] Uremic pruritus and pigmentation. Clin Exp Dermatol. 2018.


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