突然の発症!?子どもにも潜む糖尿病性ケトアシドーシスのサイン

※本記事は2026年9月時点の日本糖尿病学会、日本小児・思春期糖尿病学会、 American Diabetes Association(ADA)などの公開情報をもとに作成しています。 一般向けの医療・健康情報であり、個別の診断や治療を目的とするものではありません。

こんにちは。看護師のニシユウです。

今回は、クリニックで経験した事例をきっかけに、保護者の方にもぜひ知っておいてほしい 子どもの1型糖尿病と 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)についてお伝えします。

※記事内の事例は、個人が特定されないよう年齢や時期、経過の一部を抽象化して記載しています。

子どもが「異常に喉が渇く」「水をたくさん飲む」「尿の回数が増える」 「体重が減る」「だるそうにしている」といった変化を見せる場合、 風邪や疲れ、暑さによる体調不良だけではなく、 高血糖や1型糖尿病の可能性も考える必要があります。

「糖尿病」と聞くと、大人の生活習慣病をイメージする方も多いかもしれません。

しかし、子どもにもみられる1型糖尿病は、 一般的な生活習慣だけで説明できる病気ではありません。

特に、発見が遅れると 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)という 命に関わることのある状態に進行する場合があります。

この記事では、子どもの1型糖尿病やDKAについて、 症状・受診の目安・医療機関で行われる検査や治療を、 一般の方にもわかりやすく整理します。

糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)とは?

糖尿病性ケトアシドーシス、通称DKAとは、 インスリンの作用が著しく不足することで高血糖やケトン体の増加が起こり、 血液が酸性に傾く代謝性アシドーシスをきたす危険な状態です。

人の体は通常、血液中のブドウ糖を細胞に取り込み、 エネルギーとして利用しています。

しかし、インスリンが大きく不足すると、 血液中にブドウ糖があっても細胞の中へ十分に取り込めなくなります。

すると体は、ブドウ糖の代わりに脂肪を分解して エネルギーを作ろうとします。

この脂肪の分解によってケトン体が増加し、 さらに高血糖による浸透圧利尿で水分や電解質が失われることで、 脱水や電解質異常、代謝性アシドーシスが進んでいきます。

DKAで問題になる主な変化

  • 高血糖を伴うことが多い
  • ケトン体が増える
  • 血液が酸性に傾く(代謝性アシドーシス)
  • 脱水が進む
  • ナトリウムやカリウムなどの電解質異常が起こる
  • 重症化すると意識障害や昏睡につながることがある

ここで重要なのは、 「血糖値が高い」「尿からケトン体が出た」というだけで DKAと確定診断するわけではないことです。

医療機関では、血糖値や血中・尿中ケトン体に加えて、 血液ガス分析などから代謝性アシドーシスの有無を確認し、 総合的にDKAと診断します。

実際に経験した受診例

ある日、学童期のお子さんが受診されました。

しばらく前から体調の変化がみられており、 特に目立っていたのが強い喉の渇きでした。

保護者の方のお話では、次のような様子がありました。

  • とにかく水をよく飲む
  • 以前より尿の回数が増えた
  • 当初は食事をある程度とれていた
  • 日常生活や学校生活は送れていた
  • 徐々に疲れやすさが目立つようになった
  • 食欲が落ちてきた
  • 体重も減ってきた

診察時にも強い口渇があり、 症状から高血糖が疑われたため、尿検査と採血を実施しました。

その結果、尿からケトン体が検出され、 血糖値も非常に高い状態でした。

当院では糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)が疑われる状態 と判断し、速やかに総合病院へ紹介しました。

その後、紹介先の病院で詳しい検査が行われ、 DKAと診断され、入院治療となりました。

この事例で重要なのは、 それまで糖尿病と診断されていなかった子どもでも、 1型糖尿病の初発時にDKAを呈した状態で初めて見つかることがある という点です。

また、症状が始まった直後から必ずしも寝込むとは限りません。 初期には学校へ行けたり、食事がある程度とれていたりすることもあります。

そのため、 「元気に動けているから重い病気ではない」とは言い切れない ことにも注意が必要です。

子どもの糖尿病は「生活習慣が原因」とは限らない

ここは、特に誤解されやすいポイントです。

成人で多くみられる2型糖尿病では、 遺伝的な体質に加えて、肥満、食事、運動習慣、加齢など、 複数の要因が関係します。

一方、小児・思春期の1型糖尿病の多くは、 自己免疫反応によって、インスリンを作る膵臓のβ細胞が破壊され、 インスリンの分泌が著しく低下する ことで発症します。

遺伝的な要因や環境要因など、 複数の要因が関与すると考えられています。

そのため、 「甘いものを食べすぎたから」 「運動しなかったから」 「親の食事管理が悪かったから」 と単純に説明できる病気ではありません。

これは、1型糖尿病のお子さんや家族に対する 誤解や偏見を防ぐうえでも、とても大切なポイントです。

なお、子どもにも2型糖尿病や遺伝子異常による糖尿病など、 1型以外の糖尿病がみられることがあります。

そのため症状だけで「1型糖尿病」と決めつけるのではなく、 医療機関で血糖値、HbA1c、ケトン体、自己抗体、 必要に応じてCペプチドなどを調べ、 糖尿病の種類も含めて評価します。

見逃したくない1型糖尿病の初期症状

子どもの1型糖尿病や高血糖を早く見つけるためには、 日常生活の中で起こる変化に気づくことが大切です。

早めに医療機関へ相談したい症状

  • 喉の渇きが明らかに強くなった
  • 水やお茶を飲む量が急に増えた
  • 尿の回数や量が増えた
  • 夜間に何度もトイレへ行くようになった
  • 一度なくなっていたおねしょが再びみられるようになった
  • 食べているのに体重が減る
  • だるそう、疲れやすい
  • 以前より元気がない
  • 集中しにくそうにしている
  • 食欲が落ちてきた

特に、 多飲・多尿・体重減少 が組み合わさっている場合は、 高血糖の可能性を考えて早めに医療機関へ相談してください。

症状による受診の目安

子どもの糖尿病やDKAが疑われる場合、 症状によって緊急性が異なります。

① 早めに医療機関へ相談したい状態

  • 異常に喉が渇く状態が続く
  • 水分摂取量が明らかに増えた
  • 尿の回数や量が増えた
  • 夜間のトイレやおねしょが増えた
  • 体重が減ってきた
  • 疲れやすさや倦怠感が続いている

これらはすぐに救急車が必要とは限りませんが、 数日~数週間そのまま様子を見るのではなく、 早めに小児科などへ相談してください。

② すぐに医療機関・救急外来への受診を考えたい状態

  • 嘔吐を繰り返している
  • 水分を十分に飲めない
  • 飲んでも吐いてしまう
  • 強い腹痛がある
  • ぐったりしている
  • 明らかな脱水が疑われる
  • 呼気が甘い、果物や除光液のようなにおいがする
  • 普段とは違って深く大きな呼吸をしている

DKAでは、腹痛、吐き気、嘔吐、 アセトン臭と呼ばれる特徴的な呼気、 深く大きな呼吸などがみられることがあります。

多飲・多尿や体重減少に加えてこうした症状がある場合は、 DKAの可能性も考え、速やかな医療機関での評価が必要です。

③ 119番通報を考える状態

  • 呼びかけても反応が悪い
  • 意識がもうろうとしている
  • 意識を失っている
  • 自力で立ったり移動したりできないほどぐったりしている
  • 明らかに呼吸がおかしい、呼吸状態が悪い
  • けいれんがある
  • ショックが疑われるなど、全身状態が著しく悪い

このような場合は、自家用車での移動にこだわらず、 119番通報を含めた緊急対応を考えてください。

医療機関では何を確認するのか

高血糖やDKAが疑われる場合、 医療機関では症状や全身状態に応じて、 主に次のような検査を行います。

  • 血糖値
  • HbA1c
  • 尿糖
  • 尿ケトン体
  • 血中ケトン体(β-ヒドロキシ酪酸など)
  • 血液ガス分析
  • ナトリウム、カリウムなどの電解質
  • 腎機能
  • 血液浸透圧など
  • 必要に応じて膵島関連自己抗体
  • 必要に応じてCペプチドなどインスリン分泌能の評価

DKAの診断では、単に血糖値が高いだけではなく、 高血糖、ケトーシス、代謝性アシドーシス を総合的に評価します。

そのため、 家庭だけで「DKAかどうか」を正確に判断することは困難です。

「まだ水分が飲めているから大丈夫」
「熱がないから大丈夫」
「学校へ行けているから大丈夫」
「少し休めばよくなるだろう」

こうした思い込みによって、受診が遅れてしまうことがあります。

DKAの治療は医療機関で行う

DKAは、自宅で水分を飲ませるだけで治療できる状態ではありません。

病院では、状態を慎重に確認しながら治療が行われます。

治療の中心となるのは、次のような対応です。

  • 点滴による脱水の補正
  • ナトリウムやカリウムなど電解質異常の補正
  • インスリンによる高血糖とケトン体産生の改善
  • 代謝性アシドーシスの改善
  • 血糖値や電解質、血液ガスなどの頻回な確認
  • 感染症など、悪化のきっかけとなる病気の評価

特に小児のDKAでは、 急激に血糖値だけを下げればよいわけではありません。

輸液量やインスリン投与量を調整しながら、 血糖値、電解質、意識状態、呼吸状態などを継続して確認し、 慎重に治療する必要があります。

小児DKAでは、まれではあるものの 脳損傷などの重篤な合併症が起こることがあります。 そのため、DKAが疑われる場合は、 適切な検査や継続的なモニタリングができる医療機関での治療が必要です。

「風邪かな」「疲れているだけかな」で見逃さないために

子どもの体調不良は、風邪、胃腸炎、疲労、睡眠不足、 熱中症など、日常的によくみられる原因によって起こることも多くあります。

しかし、次のような症状がいくつも重なっている場合は注意してください。

  • 喉の渇きが強い
  • 水分摂取量が明らかに増えた
  • 尿の量や回数が増えた
  • 体重が減った
  • だるさや疲れやすさが続く
  • 食欲が低下してきた
  • 腹痛や嘔吐が加わってきた

このような症状が続く場合、 「もしかすると血糖が高いのでは?」 という視点を持つことが早期発見につながります。

子ども自身が、 「異常に喉が渇く」 「以前より尿が増えた」 といった変化をうまく説明できない場合もあります。

「最近、やたら水を飲むな」
「夜中にトイレへ行くようになったな」
「またおねしょをするようになったな」
「なんとなく元気がないな」
「少し痩せてきたな」

こうした普段との違いに周囲の大人が気づくことが、 とても重要です。

まとめ

糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)は、 放置すると命に関わることがある重い状態です。

一方で、1型糖尿病の初期症状に早く気づき、 適切な医療につなげることで、 DKAに至る前に発見できる可能性があります。

特に知っておきたいサイン

  • 異常な喉の渇き
  • 水分を大量に飲む
  • 尿の量や回数が増える
  • 夜間尿やおねしょが増える
  • 体重が減る
  • 強い倦怠感や疲れやすさ
  • 腹痛や嘔吐
  • 深く大きな呼吸
  • 意識がぼんやりする

「ただの体調不良かな」と思っても、 多飲・多尿・体重減少など、普段とは明らかに違う変化が続く場合は、 早めに医療機関へ相談してください。

また、嘔吐を繰り返す、水分を飲めない、 深く大きな呼吸をしている、意識状態がおかしいといった症状があれば、 通常の外来受診を待つのではなく、速やかな救急受診が必要です。

子どもの1型糖尿病は、 「甘いものを食べたから」「生活習慣が悪かったから」 と単純に説明できる病気ではありません。

だからこそ、保護者や周囲の大人が正しい知識を持ち、 「いつもと違う」に早く気づくことが大切です。

参考情報

本記事は、一般向けの健康情報として作成しています。 実際の症状や検査結果による診断・治療の判断については、 医師などの医療専門職へご相談ください。

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