小児多系統炎症性症候群(MIS-C)とは?保護者が知っておきたい症状・受診の目安・最新情報
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関連して、子どもにまれに起こる病気として知られているのが 小児多系統炎症性症候群(MIS-C:ミスシー)です。
MIS-Cは、COVID-19に感染している最中ではなく、感染後しばらく経ってから発熱や腹痛、発疹、目の充血、ぐったり感などが出現することがある病気です。 現在はパンデミック初期と比べて報告数は少なくなっていますが、まれに重症化することがあるため、保護者が基本的なサインを知っておくことは大切です。
この記事のポイント
- MIS-CはCOVID-19感染後、主に2〜6週間後に起こることがある
- 無症状や軽症の感染後でも発症する場合がある
- 発熱に加えて、腹痛・嘔吐・下痢・発疹・目の充血・ぐったり感などが重なる場合は注意
- 呼吸が苦しい、意識がぼんやりする、強い腹痛、胸の痛みなどがあれば救急受診を考える
- 診断や治療は医療機関で行うもので、家庭で自己判断する病気ではない
※本記事は、保護者向けの一般的な情報提供を目的としたものです。診断や治療の判断は、必ず医師の診察を受けて行ってください。
MIS-Cとは?
MIS-Cは、Multisystem Inflammatory Syndrome in Childrenの略で、日本語では 小児多系統炎症性症候群と呼ばれます。
「多系統」という名前の通り、心臓、血管、消化器、皮膚、目、腎臓、神経など、体の複数の場所に炎症が起こる可能性があります。
原因については、COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2に感染した後、体の免疫反応が過剰に働くことが関係していると考えられています。 ただし、すべての子どもに起こるものではなく、発症はまれです。
現在の最新情報:MIS-Cは「少なくなったが、ゼロではない」
MIS-Cは、COVID-19流行初期に比べると報告数が大きく減少しています。 一方で、現在もまれに報告されており、感染流行のあとに遅れて発症することがあります。
そのため、過度に怖がる必要はありませんが、 「最近COVID-19にかかった、または周囲で流行していた」+「発熱が続く」+「複数の症状が重なる」 という場合には、早めに小児科へ相談することが大切です。
発症しやすい時期
MIS-Cは、COVID-19に感染してからおよそ2〜6週間後に発症することが多いとされています。
ここで注意したいのは、子どもはCOVID-19に感染しても無症状や軽症で済むことがあるため、 保護者や本人が「感染していた」と気づいていない場合があることです。
そのため、以下のような状況があった場合は、受診時に医師へ伝えると診療の助けになります。
- 数週間前に本人がCOVID-19に感染した
- 家族や学校、園などでCOVID-19が流行していた
- 本人は軽い風邪程度だったが、その後に発熱や腹痛が出てきた
- 検査はしていないが、周囲に感染者がいた
保護者が注意したい主な症状
MIS-Cの症状は子どもによって異なります。 ただし、多くの場合で重要になるのが発熱です。
特に、発熱に加えて次のような症状が複数みられる場合は注意が必要です。
1. おなかの症状
- 強い腹痛
- 嘔吐
- 下痢
- 食欲がない
MIS-Cでは、おなかの症状が目立つことがあります。 胃腸炎と区別が難しいこともありますが、発熱が続いている、ぐったりしている、発疹や目の充血がある場合は、早めに相談してください。
2. 皮膚や粘膜の症状
- 体に赤い発疹が出る
- 目が赤い、充血している
- 唇が赤い、乾燥してひび割れる
- 舌が赤くブツブツして見える
- 手足が赤い、腫れている
これらは川崎病でもみられる症状であり、見た目だけでMIS-Cかどうかを判断することはできません。
3. 全身状態の変化
- いつもより明らかに元気がない
- ぐったりしている
- 反応が鈍い
- 水分が取れない
- 尿が少ない
子どもの病気では、検査値だけでなく「いつもの様子と違う」という保護者の気づきも重要です。 普段と比べて明らかに様子がおかしい場合は、早めに医療機関へ相談してください。
迷わず救急相談・救急受診を考えるサイン
次のような症状がある場合は、MIS-Cに限らず緊急性の高い状態の可能性があります。 迷う場合は、地域の救急相談窓口や小児救急、必要時は119番へ相談してください。
救急受診を考える危険サイン
- 息が苦しそう、呼吸が速い
- 胸の痛みや強い動悸を訴える
- 意識がぼんやりしている、呼びかけへの反応が弱い
- 顔色、唇、爪の色が悪い
- 強い腹痛が続く
- ぐったりして起き上がれない
- 水分が取れず、尿が明らかに少ない
「少し様子を見よう」と迷う場面もあると思いますが、呼吸・意識・顔色・強い痛みがある場合は、早めの対応が重要です。
MIS-Cと川崎病は似ている
MIS-Cは、発熱、発疹、目の充血、唇や舌の変化、手足の腫れなど、川崎病と似た症状を示すことがあります。
一方で、MIS-Cでは腹痛、嘔吐、下痢などの消化器症状が目立つことがあり、心臓の働きに影響が出る場合もあります。 ただし、症状だけで見分けることは難しく、医療機関での診察、血液検査、心臓エコーなどを含めて総合的に判断されます。
| 項目 | MIS-C | 川崎病 |
|---|---|---|
| 関連 | COVID-19感染後に起こることがある | 原因は明確に特定されていない |
| 年齢 | 学童期にもみられる | 乳幼児に多い |
| 症状 | 発熱、腹痛、嘔吐、下痢、発疹、目の充血など | 発熱、発疹、目の充血、唇・舌の変化、手足の変化など |
| 注意点 | 心機能低下やショックを伴うことがある | 冠動脈病変に注意が必要 |
どちらも早期の診断と治療が重要です。 保護者が病名を決めつける必要はありません。 「発熱が続く」「複数の症状が重なる」「全身状態が悪い」と感じたら、小児科へ相談しましょう。
病院ではどのような検査をする?
MIS-Cが疑われる場合、医療機関では症状や経過を確認したうえで、必要に応じて次のような検査が行われます。
- 血液検査:CRP、フェリチン、血算、肝機能、腎機能など
- 心臓に関する検査:トロポニン、BNP、心電図、心臓エコーなど
- COVID-19感染歴の確認:PCR、抗原検査、抗体検査など
- ほかの病気との鑑別:細菌感染、ウイルス感染、川崎病、虫垂炎など
MIS-Cは、ほかの病気と症状が重なるため、検査を組み合わせて慎重に判断されます。 特に腹痛が強い場合は、胃腸炎や虫垂炎など別の病気との区別も重要です。
治療は入院管理が基本
MIS-Cと診断された場合、基本的には入院して治療や経過観察が行われます。 症状が重い場合は、集中治療室で管理されることもあります。
治療の中心は、過剰になった炎症や免疫反応を抑えることです。 代表的には、以下のような治療が行われます。
- 免疫グロブリン静注療法(IVIG):炎症を抑える目的で使われることがある
- ステロイド薬:炎症や免疫反応を抑えるために使われることがある
- アスピリンなど:冠動脈や血栓リスクを考慮して医師の判断で使われることがある
- 抗菌薬:細菌感染症との鑑別が必要な段階で使用されることがある
重要:子どもに自己判断でアスピリンを使わない
アスピリンは、MIS-Cや川崎病などで医師の判断により使われることがあります。 一方で、子どもに自己判断で使うことは避ける必要があります。 発熱時の薬は、必ず医師や薬剤師に確認してください。
回復後のフォローも大切
MIS-Cは重症化することがありますが、適切な診断と治療により、多くの子どもは回復するとされています。 ただし、心臓に影響が出た場合は、退院後も心臓エコーなどのフォローが必要になることがあります。
また、回復後に疲れやすさ、睡眠の乱れ、不安、集中しにくさなどが残ることもあります。 学校生活や運動再開については、自己判断せず、主治医の指示に従うことが大切です。
予防について
MIS-Cを完全に防ぐ方法が確立されているわけではありませんが、COVID-19への感染を減らすことは、MIS-Cのリスクを減らすことにつながると考えられています。
基本的な感染対策として、体調不良時は無理に登校・登園しない、手洗い、換気、必要に応じたマスクの使用など、状況に応じた対応が大切です。
COVID-19ワクチンについては、MIS-Cのリスク低下との関連が報告されています。 ただし、接種の考え方は年齢、基礎疾患、流行状況、本人の体調などによって異なるため、迷う場合はかかりつけの小児科医に相談してください。
保護者が医師に伝えるとよいこと
受診時には、次の情報をメモしておくと診察がスムーズになります。
- 発熱が始まった日
- 最高体温
- 腹痛、嘔吐、下痢の有無
- 発疹、目の充血、唇や舌の変化の有無
- 水分摂取量と尿の回数
- ぐったり感や意識の変化
- 数週間以内のCOVID-19感染歴や周囲の流行状況
- 基礎疾患、内服薬、アレルギー
まとめ
MIS-Cは、COVID-19感染後にまれに起こる全身の炎症性疾患です。 現在は報告数が減っていますが、重症化することがあるため、保護者が受診の目安を知っておくことは大切です。
特に、発熱が続く、腹痛・嘔吐・下痢がある、発疹や目の充血がある、ぐったりしているといった症状が重なる場合は、早めに小児科へ相談してください。
ただし、発熱や腹痛の多くはMIS-C以外の原因でも起こります。 大切なのは、病名を自己判断することではなく、子どもの全身状態を見ながら、必要なタイミングで医療機関につなげることです。
お子さんの様子に「いつもと違う」と感じる場合は、遠慮せず、かかりつけ医や小児救急に相談しましょう。
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